コンピテンシーとは?活用方法、導入するメリットや注意点を解説!
従業員の評価に、コンピテンシーを取り入れる企業が増えています。
これまでと違った側面から従業員の能力や良い部分を探れるなど、多くのメリットがある一方で、導入に失敗してしまう例もみられます。
本記事では、コンピテンシーとは何か、どのように活用するべきか、導入の際の注意点について詳しく解説いたします。
※人事評価制度の全容|機能・目的・種類・導入方法・事例など幅広く解説
コンピテンシーとは
コンピテンシーの考えは、1970年代に誕生しています。
ハーバード大学のデイビッド・マクレランド教授によって、提唱されました。
同じ大学を卒業した学力レベルが変わらない人材。
面接時の試験で同じくらいの点数を叩き出した人材。
このように一見レベルが変わらなくても、仕事の成果に違いが出るのはなぜか、という部分に着目し、概念を示しました。
コンピテンシーとは、成果を上げている人がもつ優れた行動特性のことです。
ハイパフォーマーと言われる人材には必ず結果につながる行動や思考パターンがあることから、面接や評価の目安として取り入れる企業が増えています。
成果や役割は企業や職種によって異なるため、コンピテンシーも、それぞれの企業の考え方や職種によって変わります。
コンピテンシーのマニュアル本なども販売されていますが、より効果的に導入するためにも、項目を検討するところからスタートするのがおすすめです。
コンピテンシーモデルの作り方
コンピテンシーで評価する項目は、企業ごとにそれぞれ決定されます。
成果を上げている人材、業績アップに貢献している人材を参考に、成功できる行動パターンを取り入れるのが一般的です。
評価対象者であるコンピテンシーモデルは主に、社内で活躍している人です。
活躍している社員の能力へ、自社が求める人材モデルをプラスするケースもあります。
パフォーマンスが高い「実在型モデル」、企業が求める「理想型モデル」、二つを組み合わせた「ハイブリッドモデル」
どのモデルが自社に最適なのか、ヒアリングを通じて検討しましょう。
ヒアリングするコンピテンシー項目は、
・コンピテンシー・ディクショナリー
・コンピテンシーマスター評価項目
・WHOグローバル・コンピテンシー・モデル
などが参考になります。
いずれも世界で使用されている基準のため、企業方針や業界に沿った内容へ手元で変更しながらモデルを定めましょう。
具体的には、
- 対人交渉能力
- ストレス管理能力
- リスク時の判断能力
- 説明責任を果たす能力
- 大事な場面での決定能力
- タイムマネジメント能力
といった行動から、項目を決定します。
役職や業務内容によって、それぞれ策定しておくと間違いありません。
どの人材をモデルにするのか、本当にこの項目であっているのかなど、導入面で不安がある場合は、コンピテンシー項目の作成に特化したコンサルタントへ依頼するのも良い手段です。
コンピテンシーは今後の人事評価、人材育成に大きな影響をあたえる評価基準です。しっかり時間をかけて、慎重に導入しましょう。
コンピテンシーの活用法
自社のコンピテンシー項目が完成すると、さまざまな場面で活用できます。
中でも特に力を発揮するのが、3つの場面です。
・人事評価
・採用面接
・人材育成
どのような活用法があるのか、ご紹介します。
人事評価
コンピテンシーは評価制度として活用するのが一般的です。
これまでは上司の主観で決められていた人事評価制度が、コンピテンシー基準に従った評価に変わるため、曖昧な評価や不透明な評価を回避できます。
コンピテンシー評価は、評価者の年齢や学歴、スキルに影響を受けません。
「年功序列になっている風土を打破したい」
「規定の基準で上がり続ける評価制度が負担になっている」
といった場合は、積極的に取り入れてみましょう。
成果をあげている人材をモデルにしているため、評価結果が企業の業績や生産性アップへダイレクトにつながる点も特長です。
採用面接
コンピテンシー項目を、新入社員や中途採用面接で活かす方法です。
コンピテンシー面接は、事前にヒアリングした内容に沿って、
・チームでトラブルが起きた場合は、どう行動しますか?
・学業やスポーツで厳しい指導を受けた時、どうしましたか?
・これまでに目標を達成した成功体験について、話を聞かせてください
など、どのような行動を重ねてきた人物なのかを探ります。
人事担当者は、質問の答えをさらに掘り下げ、基準に値する人物であるかを確かめます。
同じような学歴、職歴の人材であっても、コンピテンシー面接によって大きな差がでるため、より自社で活躍できる人材を採用できます。
※コンピテンシー面接とは? 実施するメリットやデメリット・質問例を解説!
人材育成
コンピテンシー評価は、人材育成にも役立ちます。
理想とする人材を見つけやすいのはもちろん、社員のできていない部分が明確になるため、今後はどう行動するべきなのか指導・認識しやすいでしょう。
行動を変えることで、どのような未来が待っているのか、コンピテンシーモデルがすでに示しています。
高いモチベーションを維持したまま、目標へまっすぐ進んでいけるため、短期間で人材を育てることが期待できます。
※フィードバックで効果を出すコツは?人材育成やマネジメントに必須【例文付き】
コンピテンシー評価を導入する5つのメリット
コンピテンシー評価を導入すると、企業に下記のようなメリットがあります。
1.面接結果のばらつきを防げる
2.生産性や業績をアップできる
3.人事評価の公平感を保てる
4.効率の良い人材育成ができる
5.企業のビジョンを共有しやすくなる
メリット1:面接結果のばらつきを防げる
採用面接にコンピテンシー評価を導入すると、どの面接官でも同じ評価基準で選考できます。採用担当者によって、面接結果にばらつきがあると感じている場合は、コンピテンシー面接を取り入れてみましょう。
設問によって行動特性を見抜けるため、適所に人材を配置できる点もメリットです。
※構造化面接とは?導入するメリット・デメリットや導入方法を解説!
メリット2:生産性や業績をアップできる
コンピテンシーモデルは、実際に企業へ貢献している人材や、企業が理想としている人材がモデルです。そのため、コンピテンシー評価の高い人材が増えれば、生産性や業績アップが期待できます。
何を目的にコンピテンシーを導入するのか、明確にしてからコンピテンシーモデルを作ると、より良い結果につながります。
メリット3:人事評価の公平感を保てる
人事評価は、人事部や上司の気分によって左右されてしまうケースが少なくありません。
「自分の方が成果を出しているのに、別の人材の方が高評価されている」
という不満から、必要な人材が転職してしまった…というトラブルも多く聞かれます。
コンピテンシー評価を取り入れると、基準に応じた公平な評価になるため、従業員の不満を軽減できます。
メリット4:効率の良い人材育成ができる
「従業員全員に、同じ社員教育をしている」という場合、能力のある人物への教育が足りない、不必要な教育に時間や費用を割いている、という恐れがあります。
コンピテンシー評価後は、誰にどんな指導をするべきかが明確になり、また社員側も何をすれば評価が上がるのか理解できます。
評価後は課題解決のため、積極的に取り組む社員が増えるでしょう。
メリット5:企業のビジョンを共有しやすくなる
コンピテンシーの項目には、企業のビジョンを叶えるために必要な内容が含まれています。この基準をクリアした人材は、ビジョンへの理解が深く、一緒に達成を目指せる力強いサポーターです。
コンピテンシーの導入が、ビジョン達成へ導く有益な力になるでしょう。
※パーパスとは?MVVとの違いやメリット、運用方法まで徹底的に解説
コンピテンシー評価の導入手順
コンピテンシー評価を取り入れると決めたら、面接や人事評価など活用したい時期から逆算して、計画的に進めていきましょう。
目安となる4つのステップについて、解説いたします。
ステップ1:ヒアリング
企業内で成果を上げているハイパフォーマー人材へヒアリングをします。
ビジネス以外の部分に、できる理由が隠されているケースが少なくありません。
・対人交渉能力
・ストレス管理能力
・リスク時の判断能力
・説明責任を果たす能力
・大事な場面での決定能力
・タイムマネジメント能力
先ほども触れた、これらの項目についてどのような行動を選んでいるのか、本音を話せる環境を用意の上、対話しましょう。
ヒアリングの人数が多ければ多いほど、傾向を探りやすくなります。
企業内に、多数のハイパフォーマー人材がいる場合は、個別にヒアリングを進めてください。
ステップ2:項目のリスト化
ヒアリングで集まった情報を、職種別にリスト化します。
できる人材に共通している行動がみえてきますので、ていねいにピックアップしましょう。
一般人材はどのような傾向にあるのか、あわせてヒアリング・リスト化しておくと、より違いを見つけやすくなります。
ステップ3:モデルの決定
ヒアリングの結果をもとに、どのようなモデルを作るのか決定します。
・実在型モデル
・理想型モデル
・ハイブリッド型モデル
実在型モデルに優れた共通項がある。
理想型モデルの方が、企業のビジョンに近い。
それぞれの良い部分を合わせたい、など、幅広い可能性を検討の上、決定しましょう。
ステップ4:評価項目の決定
コンピテンシーモデルが決まったたら、リスト化された項目をもとに、評価項目を定めます。
・コンピテンシー・ディクショナリー
・コンピテンシーマスター評価項目
・WHOグローバル・コンピテンシー・モデル
海外で使用されている、上記評価基準も参考にしながら、自社に最適な項目を選びましょう。
項目を5段階や10段階などにレベル分けしておくと、評価を数値化しやすくなります。
コンピテンシー評価を取り入れる際の注意点
多くのメリットが得られるコンピテンシー評価ですが、導入にあたっての注意点がいくつかあります。ただしく取り入れるための、注意点を覚えておきましょう。
注意点1:モデル人材の本音を引き出すのが難しい
コンピテンシー評価を導入するためには、成果を出している人材からのヒアリングが欠かせません。ヒアリングでは、モデル人材の考えていること、行動していることを正しく聞き出す必要があります。
この時、モデル人材との信頼関係が築けていなかったり、モデルとなるメリットが理解できていなかったりする場合、本音を聞き出せず間違った項目になってしまいます。
正しい意見を聞けるように、最適な環境、聞き手を選定した上でヒアリングしましょう。
注意点2:評価者の話に嘘がある場合は正しく評価できない
面接時に多くみられるパターンです。
就職・転職活動をしている人材の中には、コンピテンシー面接向けの対策をしているケースがあります。
このような人材は、質問に対してどのように応えると、評価が上がるのか理解できています。
コンピテンシー対策済みの答えは、嘘や誇張が混じっている場合もあり、本当に必要な人材を採用できるとは限りません。
注意点3:コンピテンシー基準が間違っている場合がある
コンピテンシー項目を作成したけれど、基準が間違っている場合もあります。
基準や評価が正しくない場合、コンピテンシーの内容に沿って採用や人事評価、人材育成に取り組んでも、思うような成果が得られません。
この基準で合っているのか不安な場合は、専門家の意見を仰いでみましょう。
注意点4:時代や環境の変化に応じた見直しが必要
コンピテンシー基準は、時代や環境の変化に応じて作り変える必要があります。
数年前の評価が現在はまったく役に立たない、というケースがあるため、定期的に見直しましょう。
コンピテンシーを導入するなら、初期費用だけでなく見直しの予算を事前に含めておくのがおすすめです。
関連用語との違いを解説
ビジネスでは、コンピテンシーと似たような言葉が他にもあります。
関連用語との違いをみてみましょう。
「コンピタンス」
コンピテンシーのもとになっている言葉です。
物事を遂行できる能力、才能、適格性といった意味で使われます。
「コア・コンピタンス」
組織全体のコンピテンシーを、コア・コンピタンスと呼びます。
企業がどのような特長を持っているのか、技術やスキルを要しているのかなど、組織の力を表しています。
「ケイパビリティ」
コンピタンスとおなじく能力、才能、素質取った意味があります。
主に組織を指し、技術力やスキルを企業の原動力として、将来へ活用する際に使われます。
「ポテンシャル」
個人や組織がもつ潜在能力を指します。
コンピテンシー評価を導入すると、ポテンシャルの高い人材を見抜きやすくなります。
「スキル」
能力や技術力を表す言葉です。
人や組織ではなく、力そのものを指します。
まとめ
より良い採用や人材育成、人材評価をするならコンピテンシーの導入がおすすめです。
注意点を事前にチェックの上、自社に合った評価項目を決定しましょう。
定期的に見直しながら活用すれば、将来にわたっての生産性や業績アップが期待できます。
自社では難しい部分はプロの手を借りながら、最善のコンピテンシー基準を策定してください。
「ヒトクル」は、株式会社アルバイトタイムスが運営する採用担当者のためのお役立ちサイトです。
「良いヒトがくる」をテーマに、人材採用にかかわる方々のヒントになる情報をお届けするメディアです。「採用ノウハウ」「教育・定着」「法務・経営」に関する記事を日々発信しております。各種お役立ち資料を無料でダウンロ―ドできます。
アルバイトタイムス:https://www.atimes.co.jp/