求人票はなぜ嘘情報が多い? 3つの理由と正しく記載するポイントを解説

求人票はなぜ嘘情報が多い? 3つの理由と正しく記載するポイントを解説
目次

企業の求人情報を紹介する求人票。

求職者の多くが、求人票の内容をみて応募を検討しますが、給与や賞与、残業時間、交通費などの項目に嘘が含まれているケースが少なくありません。

なぜ求人票に嘘を書く企業が多いのか、正しく書いて信頼を獲得するためにはどうしたら良いのか。

求人票にありがちな嘘と、嘘があった場合のペナルティ、記載のポイントを解説いたします。

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求人情報で見られがちな7つの嘘

求人票に嘘が含まれるのは、意図的に嘘をついている企業だけが原因ではありません。

解釈が違ったり、情報が古くなっていたり、といった理由で間違った情報を求人票に載せてしまうケースもあります。

まずは、目にする機会が多い、7つの嘘をチェックしてみましょう。


求人票と勤務実態の調査結果

ハローワークが実施した、求人票と実際の労働条件との違いをまとめた調査があります。

令和3年度の調査では、全国に4,000件以上寄せられた申し出、苦情のうち、約2,000件が「求人票の内容が実態と異なる」という声を寄せていました。

令和3年度 ハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数

ハローワークが管轄していない求人を含めると、その数はもっと多いと予測されます。

割合としては、賃金に関する相談が27%ともっとも多く、次に就業時間に関する相談が19%、職種や仕事内容、選考方法、応募書類に関する相談が17%と続いています。

どのような嘘が求人票に含まれていたのか、次は具体的な例を見てみましょう。


1:残業代や交通費が基本給に含まれている

基本給の項目に残業代や交通費が含まれてしまっているケースです。

基本給の良さに惹かれて応募したものの、実際は残業代や交通費をすべて含めた給与のため、希望よりも手取りが下がってしまった、という不満が生まれてしまいます。

基本給に含まれた残業時間が長時間の場合、求職者の想定より労働時間が長くなる、残業がない場合の給与が大幅に下がる、といったトラブルになる可能性があるため、注意が必要です。


2:給与やボーナスの額が更新されていない

平均給与の額を、景気が良かった時代や業績が良かった時の金額にしているケースです。

賞与に嘘がある場合は、実際には1ヶ月分の賞与なのに3ヶ月分、といった形で多めに記載する例がみられます。

ボーナス額は企業の業績、個人の頑張りなどに応じて決定されます。

そのため、求人票と違う=嘘とはいえませんが、採用した人材が安心して働ける会社を目指すなら、できるだけ正しい記載を心がけたい項目です。

求人票の給与の書き方を徹底解説|応募者増につながる表現や注意点とは


3:有給が休日に含まれている

休日日数の中に、有給休暇分が含まれてしまっているケースです。

実際には有給を使用しなければ、求人票通りの休みが取れず、予定していた以上に出勤が増える、といったトラブルが考えられます。

「有給も休日ではあるため、嘘ではない」と言い張るケースがありますが、求職者側は騙された気持ちになる場合が多いため、正確に書きたい部分です。

日本の年間休日ってどのくらい? 平均休日日数を紹介!


4:残業時間が実際と違っている 

残業は月10時間程度です、などと労働条件へ記載されているにもかかわらず、いざ入社したら毎日のように残業が待っていた、というケースです。

ブラック企業の場合、残業は10時間で間違いないものの、それ以外はサービス残業扱い、といった対応をする場合もあります。

この例のように、ブラック企業の求人票は、意図的に残業時間を短く記載する求人詐欺が少なくありません。

その求人広告は大丈夫?「勤務時間」の表記で注意することをご紹介。


5:交通費の支給範囲が間違っている

遠くから会社へ通う人材にとって、交通費の支給額は収入を左右する重要なポイントです。

にもかかわらず、交通費全額支給と書いてあったのに、実際は交通費の一部だけしか支払われなかった、というトラブルが報告されています。

交通費については、面接や書面で詳しく確認しない場合が少なくありません。「入社してから上限があると知った」そんなトラブルを未然に防ぐために、丁寧に説明しておくと安心です。 

交通費はどう払う? 計算方法や支給要件・不正受給・在宅勤務についても解説!


6:仕事の難易度や昇給制度に嘘がある

誰にでもできる簡単な仕事です、と書かれている求人が、実際は覚えることが多く、体力的にもハードだったなど、仕事の難易度に嘘が含まれている場合があります。

業務内容だけでなく、頑張り次第でどんどん昇給できます、未経験からでも幹部を目指せます、といった言葉があるのに、実態がないケースもみられます。


7:雇用形態が実際と異なっている 

正社員の募集になっているのに、いざ面接を受けたら契約社員だった、という嘘です。

契約社員から正社員登用の実績がある、といった説明を受け、雇用契約を交わしてしまうケースもあります。

求人票に雇用形態を明記せず、正社員のような書き方をしているけれど実は有期契約というパターンもみられます。

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嘘の求人票で人材募集する3つの理由

企業の中には、嘘を承知であえて良い条件を記載したり、真実をぼかした求人票を作成したり、という例があります。

なぜ嘘の求人票を作成してしまうのか、3つの理由をみてみましょう。


理由1:嘘をついてもペナルティが少ない

求人票の内容に嘘がある場合、求人詐欺にあたります。

一方で、雇用契約はそれぞれ個人と結ぶものであり、求人票の内容をすべての人にあてはめるのは困難です。

厚生労働省のサイトにも、以下のようなQ&Aがあります。 

Q:求人誌を見て就職しましたが、求人誌に書いてあった給料や勤務時間などの条件と実際の条件が違っていました。これは労働基準法違反ではないのですか。

A:労働基準法第15条には、労働条件の明示が定められていますが、この条文で言う労働条件の明示とは労働者個々人に対して書面で明示される労働条件のことです。つまり、求人誌やハローワークに掲載されている求人票はあくまでも募集の際に提示する労働条件の目安であり、労働基準法第15条で定める労働条件の明示には該当しません。

求人誌や求人サイト、ハローワークに提示されている内容は、あくまでも目安であり労働基準法には該当しないことが分かります。

企業が嘘をついていたとしても、「求人票に書かれている内容は目安ですから」と言われてしまえば、それ以上追求するのは難しく、重い罰則が科されるケースはほとんどありません。 

掲載している求人が、そもそも採用する予定のない空求人のため、情報が間違っていても気にしない、という企業もあるようです。

厚生労働省:労働基準/よくある質問 
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyunhou_5.html 

2024年4月1日改正|労働条件の明示義務とは?


理由2:自社の求人を多くの人に見て欲しい 

採用に悩む企業が多い中、自社求人を目立たせたり、多くの応募を集めたりするために、嘘をつくケースがあります。

「求人サイトを利用しているから利用期間内に人材を獲得したい」
「急ぎで社員を募集したいから、興味を持たれるように内容を盛った」
「同業他社よりも給与や賞与面、待遇面で劣っているから本当のことを書けない」

などの理由もあり、競合に打ち勝つため、早期に人材を集めるために、求人情報に嘘を含んでいる例です。


理由3:本当のことを書く気がないブラック企業

ブラック企業は、最初から求人票に嘘を書いても良いと考えがちです。

辞める社員がいても、新しい社員をどんどん雇用すればいい、そんな考えが企業全体に浸透しています。

採用した人材が、求人票に嘘がある事実に気付いても、パワハラやモラハラで追い詰めたり、仕事を過剰に与えて辞められないようにしたり、といった悪質な例がみられます。


求人票の嘘が引き起こす3つのデメリット       

求人票に嘘があっても、大きな罪にはまず問われません。だからといって、周りの会社もしているから……と嘘をついてしまうとデメリットがあります。

求人票に嘘があった場合に考えられる、マイナス面を知っておきましょう。


厚生労働省から指導や処分を受ける場合がある

求人票に嘘が含まれている場合、罰金や懲役と言った大きな罰は受けないものの、指導や処分を受ける場合があります。 

1つ目は職業安定法第48条の2に該当するもので、求人票に嘘がある場合、求人者に対して必要に応じた指導、助言を行うとあります。 

2つ目は職業安定法48条の3第参3項に該当するもので、改善命令や勧告に従わなかった場合、公表できるとあります。 

求人広告に虚偽の内容が合った場合、厚生労働省からの指導、処分を受ける可能性があり、従わなかった場合は公表されるケースがあります。

企業のイメージを悪くする重大なデメリットになるため、正しく記載するのがおすすめです。


雇用条件が変更されるケースがある

転職サイトなどに書かれた雇用条件と実態が違い、面接や契約の際にきちんと説明できていない場合、求人票の内容が正しい、と判断される場合があります。

求職者が求人票と実態の違いについて裁判を起こした場合、求人票の内容で雇用契約書や労働条件通知書の作成が求められるケースがあります。

企業側にとって、不利な採用条件になる恐れがあることを理解し、実態に即した内容を記載しましょう。


企業の信頼が失われる

求人票に嘘があった場合、今の時代あっという間に風評が広がります。

あの企業の求人は空求人だった、転職サイトや転職エージェントに載っていた内容と全然違った、このような口コミが拡散されてしまうと、その後の採用活動が不利になるでしょう。

口コミの内容は簡単に消せず、求人票を見直しても信頼を取り戻せない場合があります。

取引先との関係が悪くなったり、企業の価値が下がったり、という恐れもあります。

何よりも嘘の求人で仮に採用できても、信頼関係がなければ長く続かないでしょう。
かえって採用コストの無駄になることもあるため、正確な求人票の作成に努めましょう。

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嘘のない求人票を作成する6つのポイント

安心して応募して貰うためにも、採用した人材に気持ち良く働いて貰うためにも、嘘だと疑われない求人票作りが求められます。

どのような部分に気をつけると、安心して応募できる内容になるのか、6つのポイントを解説いたします。

  1.  給与や休日を正しく記載する
  2. 実態に応じた表現にする
  3. 変更の予定がある項目は外す
  4. 内容変更はいち早く周知する
  5. 問い合わせ窓口を設置する
  6. 専門家による診断をお願いする


ポイント1:給与や休日を正しく記載する

給与や休日は、応募者が特に重要視している部分です。

安心して就活、転職できるように、条件を間違いなく明記しておきましょう。

給与は、会社全体の平均などを記載するのではなく、募集職種の平均給与を提示する、上限下限を記載する場合は、下限の実態を嘘なく記載する、という点を遵守してください。

基本給と残業代は分けて書く、といった配慮も必要です。


ポイント2:実態に即した表現にする

求人票の記載が、大げさにならないように注意が必要です。

仮に試用期間がある場合、最初から正社員としての給与を書いてしまうのではなく、

「月給20万円~(試用期間3ヶ月は月給18万円)」

といった形で、実際に受け取れる給与、待遇を、分かりやすく記載してください。

産休有、定時退社制度有、といったメリット部分は、より詳しく説明すると安心です。

「育休取得実績90%以上」「毎週月・水曜日はノー残業デー」などの言葉で、リアルな実態を伝えましょう。


ポイント3:変更の予定がある項目は外す

待遇や福利厚生など、今後変更になる予定がある項目は、記載を避けるのがおすすめです。

その項目が求職者にとって決め手だった場合、内定辞退や不信感に繋がってしまいます。

求人票では説明が難しい部分は、面接で直接説明すると安心に繋がります。


ポイント4:内容変更はいち早く周知する

求人票の内容に変更があった場合、できるだけ早い周知に努めましょう。

求人サイトを利用している場合は、内容を変更の上、変更日や変更内容を記載しておくと親切です。

情報の変更については、2022年の職業安定法改定で、明確な表示が義務付けられています。

過去の情報を消してしまうのではなく、打ち消し線を引くなど、見た人に変更が伝わるようにしましょう。

合わせて、ホームページやブログ、SNSなどでも、情報を共有しておくと、必要な相手に伝わりやすくなります

面接が迫っている候補者、退職が迫っている転職希望者などがいる場合は、電話やメールで通知すると信頼度をアップできます。


ポイント5:問い合わせ窓口を設置する

求人について分からないこと、事実かどうか確認したいことを問い合わせられる窓口があると、求職者の安心につながります。

メールや電話、SNS、HPの問い合わせフォームなどを設置して、速やかに回答できる体制を整えておきましょう。

応募や面接前に問い合わせができると、ミスマッチを減らせるというメリットもあります。

自社に合った人材と出会うためにも、気軽に利用できる連絡先を用意してみてください。


ポイント6:専門家による診断をお願いする

自社でいろいろ検討してみたけれど、求人票の正しい書き方が分からない、という場合、専門家に診断をお願いする、という手段があります。

嘘のない求人原稿になっているかどうか、という部分だけでなく、応募や採用に繋げるにはどうしたら良いのか、という点を相談できるため、質の高い求人票を作成できます。 

求人票の書き方の正解が分からない場合は、求人支援サイトや転職エージェントが提供しているサービスを、利用してみてください。


まとめ

嘘の含まれた求人票を作成する企業が多くみられますが、誠実に正しい情報を伝えている企業の方が、コツコツ信頼を獲得できます。

長く健全な企業運営をするためにも、良い面、悪い面をきちんと伝えて、その上で興味をもってくれる応募者を大切にしましょう。

嘘を書かなくても、はたらくメリットや会社の雰囲気を伝えられれば、応募率や採用率を増やせます。

自社で作るのが難しい場合は、専門家の手も借りながら、最善の求人票を作成してください。

 


 

ヒトクル編集部
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ヒトクル編集部

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