ワークライフバランスを正しく知ろう|使い方や取り組み・メリットを解説
日本でもよく聞かれるようになった「ワークライフバランス」という言葉から、例えば「定時で帰れる」「有給が遠慮なく使える」といった状況を思い浮かべる人は多いかもしれませんが、実際には少しニュアンスが異なります。
この記事では、誤解されがちなワークライフバランスについて、正しい使い方や具体的な取り組み、企業・組織で推進するメリットなどを解説します。
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「ワークライフバランス」の正しい意味と使い方
厚生労働省の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」では、ワークライフバランスが実現した社会の姿について、以下の通り定義されています。
〔仕事と生活の調和が実現した社会の姿〕
1 仕事と生活の調和が実現した社会とは、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」である。
※出典元:厚生労働省|仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章
少しかみ砕くと、「仕事・プライベートの両方を充実させ、互いによい結果につなげる」といった意味合いになります。
自分が置かれた状況・環境・年齢を問わず、自分の意思で自由に生き方を選んでいる人は、ワークライフバランスを実現しているといえるでしょう。
誤解されやすい「ワークライフバランス」
ワークライフバランスという言葉のニュアンスは、多くの日本人にとって誤解されやすいものです。
仕事とプライベートを天秤にかけるイメージがしやすいため、どうしても「仕事量や負担を減らす」「プライベートを充実させる」という点にフォーカスして考える人が多いものと推察されます。
しかし、ワークライフバランスの実現とは、仕事とプライベートのウェイトを同等にするという意味ではありません。
仕事またはプライベートに費やす時間・労力につき、バランスをとるために一部を削るというのではなく、それぞれの時間を充実させて好循環につなげるというのが、本来のワークライフバランスの意味合いです。
新型コロナ禍では、リモートワークを採用した企業が多く見られ、半強制的な機会ではありましたが「社員は在宅でも仕事ができる」という気付きにつながりました。
この点を踏まえ、個人の置かれた状況に応じて柔軟に働き方を変えられれば、例えば子育て・介護中であっても正規社員と同等のパフォーマンスをあげることも可能になるでしょう。
これから自社でワークライフバランスの本格的な推進を検討する場合、他社で推進された過去の事例も検討しつつ、本来の意味を十分に理解した上で施策に落とし込む必要があります。
「ワークライフバランス」の正しい使い方・表現方法
ビジネスシーンで、ワークライフバランスという言葉を正しく使えるようになるためには、正しい使い方を知っておくことが大切です。
以下、ワークライフバランスという言葉を使いがちなシチュエーションを例にとり、正しい使い方をいくつかご紹介します。
<自社の取り組みを説明するケース>
自社のワークライフバランスを改善し、子育て世帯でも安心して働けるよう時短勤務制度を設けた。
<面接で自社のワークライフバランスについて聞かれたケース>
当社では、ワークライフバランスの観点から、バックオフィス部門のテレワーク化を進めています。
<求人情報で求職者に取り組みをアピールするケース>
成果だけでなく、労働生産性を評価する仕組みを構築し、ワークライフバランスの推進をはかっています
ワークライフバランスはもう古い?
ワークライフバランス憲章が策定されたのは2007年(平成19年)のことで、すでに古い言葉だという意見も聞かれることがあります。
また、ワークライフバランスの実現にあたっては、企業側が勤務時間・休暇日数といった条件を気にせざるを得ないことから、日本では「企業が従業員のために行う施策」といった意味合いで理解されがちです。
こういった事情から、ワークライフバランスに代わる新しい考え方を提唱する動きも見られるようになりました。
ワークライフマネジメント
ワークライフバランスに代わる新しい概念の一つが「ワークライフマネジメント」で、仕事と生活のマネジメントを、働き手自身が自ら実践するという意味で用いられます。
企業の施策をイメージすることにつながりやすいワークライフバランスに比べると、立場に関係なく、個人が自らの努力によって生活・仕事の質を高めるという点が強調されている部分に違いがあります。
ワークライフインテグレーション
ワークライフインテグレーションとは、仕事とプライベートな時間をあえて分けることなく、ともに「人生の重要な時間」としてとらえる考え方のことです。
例えば、仕事と余暇を同時に楽しむ「ワーケーション」のようなイメージです。
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ワークライフバランスが必要とされる背景
日本の労働者の多くは、いわゆる「社畜」「ブラック企業」といった言葉が生まれるほどに仕事中心の生活を送りがちであり、仕事と生活の両立が厳しいという現実があります。
その一方で、家庭の事情などから思うような仕事に就けず、十分な収入を得られていない人も少なくありません。
産業構造も変化し、正規社員・非正規社員の業務負担差・賃金差も激しくなり、十分な利益を得られず体制を変えられない企業も多く見られます。
共働き世帯は増加しているにもかかわらず、男女の固定的な役割分担が継続しているなど、職場・家庭・地域の意識も社会の変化に追随できておらず、国民の生涯未婚率も上昇傾向にあります。
そのような中、企業が労働力を確保するためには、これまで諸々の事情から働き先が限られていた人々の就業参加が重要になってきます。
日本でワークライフバランスが必要とされているのは、労働人口の減少にともない、社会の改革が求められていることが大きな理由といえるでしょう。
ワークライフバランスが特に日本で必要とされる理由
少子高齢化が叫ばれる中、現代の日本の課題を解決する上で重要なのは、未来の世代へと希望をつなぐこと・人的資源を有効に活用することです。
以下、それぞれの観点から、ワークライフバランス推進する理由について解説します。
少子化対策(育児・就労の両立支援)
日本では、女性がいったん子育てを理由に離職してしまうと、退職前に描いていたイメージでのキャリア構築が難しくなってしまう場合があります。
また、男性が育休を取得して、主体的に育児・家事に関わることも、あまり歓迎されない風潮が見られます。
このような状況を改善し、男女ともに育休を取得できるようにすることは、女性の雇用継続にもつながります。
2021年6月に育児・介護休業法が改正され、国も男性の育児休業取得を促進していることから、企業にも具体的な取り組みが求められています。
※知らないとトラブルに?育児・介護休業法の改正ポイントと対応方法について
幅広い人材の就労環境を整備(労働人口の確保)
日本での人口面でのリスクは、子どもが少なくなるだけでなく、高齢者が多くなることも含まれます。
団塊および団塊ジュニア世代の高齢化が進むことで、家族が介護に回らなければならない時間が増えたり、介護施設に頼ったりするケースが増えるものと予想されます。
そのような中、介護中でも仕事ができるような環境を整えられれば、フルタイム勤務にこだわらなくても労働人口を確保することが可能になります。
社員がオフィス以外で働ける体制を整えること・時短勤務などの柔軟な勤務時間を認めることが、企業の人材募集時の必須要件となる日は近いのかもしれません。
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ワークライフバランスを推進する目的とは
政府は、ワークライフバランスを推進することで、大きく3つのことを日本社会で実現しようと考えています。以下、ワークライフバランス憲章をもとに、政府が目指している社会のあり方についてご紹介します。
就労による経済的自立が可能な社会
ワークライフバランスの推進によって、政府は「就労による経済的自立」が可能な社会の構築を目指しています。
若者をはじめとした「経済的自立を必要とする人々」が、経済的に自立できる収入をもらっていきいきと働ける状況は、当人だけでなく社会にも明るい兆しとなります。
収入・生活が安定すれば、結婚・子育てのハードルも低くなり、人生における希望を実現しやすくなるでしょう。
健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
経済面での充実だけでなく、「健康で豊かな生活のための時間」が確保できる社会の実現も、政府が目指すものに含まれます。
経済的には十分に生活できるだけの収入があっても、終電で帰り始発で会社に向かうような毎日を過ごすような生き方では、働き手はやがて体調を崩してしまうおそれがあります。
家族や友人と過ごす時間を充実させたり、自己啓発・地域活動への参加に時間を割いたりするためには、健康を維持することが誰にとっても大切です。
多様な働き方・生き方が選択できる社会
経済面での自立と健康維持を、人生のいかなる場面においても実現するためには、フレキシブルな社会であることが理想です。
年齢や性別に関係なく、自分の能力・適性を活かすのであれば、チャレンジの選択肢はできるだけ幅広い方がチャンスを増やせるでしょう。
特に、子育て・介護の時期はどうしてもプライベートに時間を費やさなければならず、その時期に不公平な処遇が許されるような社会だと、就労の機会が限定的になってしまいます。
政府はこの点にもワークライフバランス憲章の中で触れており、個人の置かれた状況に応じて多様で柔軟な働き方ができ、処遇も公正な社会の実現を目標としています。
※ダイバーシティとは?導入のメリットや注目されている理由、取り組み事例も紹介!
ワークライフバランスを推進するメリット
企業がワークライフバランスを推進することで得られるメリットは、具体的な施策を講じる時間と労力を差し引いても、非常に魅力的なものです。
以下、具体的なメリットをいくつかご紹介します。
従業員へのプラスの効果
ワークライフバランスの推進は、企業における従業員の働き方に直結する問題のため、業務効率化などの施策は必須です。
適切な施策が講じられれば、必然的に従業員の残業時間も減り、定時で帰れる時間が増えるため、プライベートも充実させやすいでしょう。
企業にとっては、従業員のモチベーションアップと生産性向上を同時に実現するチャンスといえます。
優秀な人材が集まりやすい
能力・適性次第で、どんな人材でも働けるような環境を構築できれば、これまで家庭の事情や体調を理由に応募をあきらめていた人材を募集することが可能になります。
現職の従業員が体調を崩した場合、家族を介護しなければならない場合なども、スムーズに働き方を変更することができます。
結果、離職率の低下や応募率の向上につながり、優秀な人材を集めやすくなるでしょう。
自社のイメージアップ
ワークライフバランスの推進を実践し、社内外から「従業員が働きやすい企業」と認知されると、自社のイメージアップが期待できます。
ESG投資の観点からも重要なポイントであることから、新たな投資先とのつながりを生む上でも効果的です。
※採用ブランディングとは?メリットや背景、導入の手順をわかりやすく解説
社外での時間がイノベーションに
残業や休日出勤などの回数が減り、従業員のプライベート時間が増えると、業務外活動の充実が期待できます。
業務外活動の中には、自社の業務に活かせる経験も少なくなく、これまでにない発想からイノベーションが起こるチャンスが生まれる可能性があります。
コスト削減
いい意味で、社員がオフィスで働く時間が少なくなると、従業員の人件費やオフィスの光熱費が削減できます。
また、離職率が減少すると、新たな人材の採用活動時に発生するコストも少なくなります。
※【離職率とは】算出方法や業種別の傾向・下げるための対策について
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ワークライフバランス推進の具体的な取り組み
ワークライフバランス推進を実現するにあたり、企業はどんな取り組みをすべきなのか、具体的に取り組む内容を考える必要があります。
例えば、以下にあげるような取り組みが、ワークライフバランス推進には求められます。
休暇制度の改善・充実
一昔前まで、育児休暇・介護休暇は「主に女性がとるもの」というイメージが強いものでしたが、企業は男性が育児・介護に関わるケースも想定しなければなりません。
従業員の男性が抵抗なく休暇をとれるよう、企業として環境整備を徹底することが重要です。
時短勤務・フレックスタイム制度の導入
従業員のフレキシブルな働き方を実現する上では、時短勤務やフレックスタイム制度の導入をスムーズに進めたいところです。
時短勤務は1日の労働時間が固定されていますが、フレックスタイム制度に関しては労働時間をある程度自由に決めることができます。
各種制度を導入する際は、パターンを固定化することなく、従業員の人数に応じて複数のケースを想定しておくのが理想です。
長時間労働の是正
会社全体で長時間労働が常態化すると、従業員のパフォーマンスに悪影響を及ぼすだけでなく、残業分のコストもかかってしまいます。
残業許可制やノー残業デーなど、気軽に長時間労働ができないような仕組みを設けることが、ワークライフバランスの推進につながります。
※労働基準法等の法律における労働時間|人事労務が押さえておきたいポイント
場所や時間にとらわれない働き方の実現
オンラインでのやり取りが増える中、ビジネスにおいてもコスト削減等の理由から、Web会議システムやチャットツールなどを導入する企業が増えてきています。
テレワークを促進するシステムを導入して、従業員が場所や時間にとらわれない働き方を実現できると、雇用できる社員の条件を純粋な能力・適性に限定しやすくなります。
また、出張や通勤に発生する交通費を削減したり、出社困難者が在宅で仕事できたりするメリットもあります。
※リモートワークとは?メリット・デメリット、導入時のステップと注意点
福利厚生の充実
経営の神様といわれる故・松下幸之助氏は、社員の自主的な学び・成長のため、国よりも早く週休二日制を提唱しました。
単に休みを2日にするのではなく、1日を休養・1日を教養に充てるという発想から導入されており、このような考え方はワークライフバランスの先駆けともいえます。
現代で企業が福利厚生を充実させようと考えるのであれば、資格取得時にその資金を援助したり、リフレッシュのためのレジャー施設割引特典を付与したりする方法が考えられます。
福利厚生の充実は、巡り巡って仕事の成果にもつながることを、松下氏は見抜いていたのかもしれません。
※福利厚生の種類や目的・企業にとってのメリットなどを分かりやすく解説
働き方の効率性に配慮した評価制度の構築
日本では、長らく長時間労働を礼賛する傾向が見られましたが、短時間で帰れる(効率性のある)働き方を評価する企業は少数派でした。
この点に関しては、ただ成果だけを評価するのではなく、働き方に応じた人事評価・業務効率化プロセスの評価・管理職のマネジメント評価など、複数の評価制度を設けることが重要です。
仕事の進め方の効率化
普段の仕事の進め方を効率化するには、従業員一人の努力だけでは不十分であり、組織全体で改善策を講じることが求められます。
部署レベルで考える場合、スタッフそれぞれの業務を洗い出して無駄を発見し、各々の業務フローを改善するスケジュールを立てることになります。
また、スタッフ個々の業務効率化について、管理職が進捗を確認できるよう体制を整えることも大切です。
ワークライフバランスの取り組みを行っている企業事例
これから自社で具体的な取り組みを進めるにあたっては、前例を参考にするのが近道です。
以下、実際にワークライフバランスに関する取り組みを行っている企業の事例をご紹介します。
アステラス製薬株式会社
https://re-jp.astellas.com/jp/recruit/newgraduates/environment/dei/wlb/
アステラス製薬株式会社では、全社的なノー残業デーとして「FFday(Family Friday)」という取り組みを行っており、FFDayでは社員の16時退社を推進しています。
この取り組みは、社員のメンタルヘルス対策として「平日に家族との団らんの時間をとること」を目的に提案され、金曜日の早期帰宅を促す仕組みとして定着しました。
その他、コアタイムを廃止したスーパーフレックスタイム制度への移行・新型コロナ禍前から運用されている在宅勤務制度に加えて、兼業制限も緩和されています。
株式会社KELK
株式会社KELKでは、長時間労働の恒常化を改善するため、長時間労働是正の取り組みを進めてきました。
定年退職者技術者等の経験者雇用の推進や、月・水・金曜日に早期帰宅を促す「健康デー」の設定のほか、課長が部下の残業計画を立てて総務部に申請する「残業時間の事前計画申請」といった取り組みが行われています。
株式会社ヒューマンシステム
https://www.humansystem.com/worklife.html
株式会社ヒューマンシステムでは、創業初期の段階からワークライフバランスを意識した取り組みが進められており、平成20年度には「東京ワークライフバランス認定企業」として東京都から表彰されています。
フレックスタイム制度の導入のほか、個人別の評価基準・目標設定、ジョブチェンジを可能にするための教育研修といった取り組みを行っています。
教育研修に関しては、大学院への通学支援制度・専門学校の通信講座受講制度の導入を行っており、従業員の利用実績もあります。
まとめ
ワークライフバランスとは、仕事とプライベートをともに充実させることであり、単純にプライベートの時間だけが長くなればよいという話ではありません。
そのため、具体策をどのように講じればよいのか、途方に暮れている人事担当者も多いものと推察されます。
事例を見る限り、すべてを一度に変えようとせず、自社のネックとなる部分を優先的に改善するのが望ましいでしょう。
採用段階において、すでにワークライフバランスに関連する施策を講じているのであれば、求人情報に実績等を反映させることもできます。
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求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。