深刻さを増す中小企業の人手不足…人材が足りない理由や対策をチェック!
10年前と比較して、中小企業の人手不足が深刻な問題となっています。
少子高齢化や業界ミスマッチなどを理由に、医療、福祉、建設、運輸などの業界が特に深刻な採用課題を抱えています。
これから先、子どもの数がさらに減り、働き方改革も進むと予測される時代です。この状況の中、必要な人材を獲得するために、労働状況の改善や高齢者・外国人人材の雇用など、新しい施策が求められています。
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日本企業が人手不足に悩まされている理由
日本にある多くの企業が人手不足問題を抱えています。
また、人手不足に陥っている会社は、すでに業務に必要な人員が確保できていないケースが少なくありません。
思うように人材を採用できなかった結果、これまで通りに業務を進められなかったり、売上が落ちてしまったり、といった悩みを抱えている経営者もみられます。
このような人材不足が起きている理由は主に、「少子高齢化」と「業界のミスマッチ」です。企業に深刻な影響を与えている背景を、まずはチェックしてみましょう。
少子高齢化による人材不足問題
日本は少子高齢化が大きな問題となっている国です。
主な業務の担い手となる15歳~64歳が、今後2070年に向けて年々減少すると予測されているなど、厳しい状況が今後も続きます。
定年後も働き続ける65~74歳のシニア層への期待が高まる一方で、シニア層自体もすでに減少へ転じています。
出生数の増加も見込めない中、これまで以上に労働人材を得るのが難しくなると考えられます。
次に、パーソル総合研究所が、中央大学経済学部、阿部正浩教授と共同開発した2019年の予測(労働市場の未来推計 2030)をみてみましょう。
この予測では、2030年に向けて労働人口が644万人不足する、というデータがあります。
2030年が迫ってきていることもあり、年々減りゆく労働力をどう確保するべきか、企業の大きな課題になっています。
従業員一人当たりにかかる実質賃金(時給)も、2017年の1,835円が2030年には2,096円に上昇すると予測されています。採用した人材へ支払うコストが上昇していることから、費用面での課題も残されています。
業界ミスマッチによる人材不足問題
少子高齢化に加えて、業界間のミスマッチも人手不足の要因です。
厚生労働省によると、令和5年11月の有効求人倍率は、1.28倍となっていて、人材一人当たりに1件以上の求人がある計算になっています。
厚生労働省:一般職業紹介状況(令和5年4月分)について
ところが、土木や介護、サービスなどの仕事では有効求人倍率が高くなっているのに対し、事務などの人気職では有効求人倍率が1.0倍を大きく下回るなど、採用が難しい職種、やさしい職種の差が開いています。
有効求人倍率が高い業界では、求人を出しても人材が集まらないという、採用担当者の悩みがあります。求職者側からみると、やりたい仕事は倍率が高く理想の仕事に就けない、という問題を抱えがちです。
土木や介護、サービスなどの体力が必要な仕事はできるだけ避けたい、年齢を重ねても続けられる仕事を選びたい、という求職人材の本音もあります。
理論上は求人数と求職者数がほぼ釣り合っているのに、採用へ結びつかない。このような業界ミスマッチが続いていることから、中小企業の人材確保が厳しくなっています。
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特に人材が足りない3つの業界
人手不足で悩む企業が増える中、特に人材不足が叫ばれているのが「建設業」「運輸・郵便業」「医療・介護業」です。
労働力確保のため、早期に人手不足解消に取り組むべき職種・業界の現状をみてみましょう。
建設業
令和5年11月の調査で、もっとも労働者が不足しているのが建設業です。
建設業は、現役で働いている労働者に占める高齢者の割合が大きいこと。
また、休みを取りづらい、働き続けるのは体力が必要といった理由で就職を望まないケースが多いことから、人材が不足しています。
さらに、高度成長期に作られた道路や上下水道、電力設備などの建築インフラが、今後老朽化を迎えると言われています。これらの修繕、新規建設を担う労働者が足りておらず、整備や運用に問題が起きる恐れがあります。
建設業は、働き方改革により2024年4月以降は時間外労働が規制されるため、労働力の確保が急務です。また労働時間が改善されても大変そうな業界、というイメージが残っているため、変化をアピールする必要があるでしょう。
建設業を運営している企業は、現在の主軸である高齢人材が退職する前に、できるだけ早く手を打つ必要があります。
運輸業・郵便業
運輸業・郵便業も、2024年4月以降の働き方改革で、時間外労働の規制がはじまります。
規制に伴い、現在は一人のドライバーが運んでいる荷物を、二人で手分けして運ぶ必要があったり、物流拠点で荷物を載せ替える手間が増えたり、といった業務内容の変更が予測されます。このことから、運輸業・郵便業の仕事は、ますます人材の確保が厳しくなるでしょう。
オンラインショッピングの利用者が増えていること、ドライバーが高齢化していることも、運輸業・郵便業が人材不足に陥っている理由です。
燃料費の高騰などの問題もあり、既存人材や新規採用者に向けた給与アップが難しいというのも、運輸業・郵便業が抱えている問題です。
医療・介護福祉業
建設業・運輸・郵便業に次いで、人手不足を抱えているのが医療・介護福祉業です。
医療や介護福祉サービスを利用する高齢者が増える中、特に人口の多い団塊の世代が2024年には75歳前後になる背景もあり、介護や医療の担い手が不足しています。
厚生労働省によると、令和4年の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳と、80歳をこえても元気な人がたくさんいます。これらの高齢者を介護、看護するための人員が必要です。
人の生活や命に直結する重要な仕事である一方で、給与水準が低い、土日や深夜などの仕事もある、といった現状から、人が集まりにくい傾向にあります。
2024年4月からは、無資格の介護職員に、認知症介護基礎研修の受講が義務づけられます。この改正により、介護者が安心して利用できるようになる一方で、事業所や働く人の負担は増加します。
大変な仕事だからこそ、給与や労働環境の見直し、やりがいを感じられる経営体制への早期転換が求められています。
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人手不足が中小企業に与える課題
従業員不足の状態が続くと、中小企業にどのような影響が考えられるのでしょうか?
「経営に関連する課題」と「働く社員に関連する課題」を表にまとめました。
経営に関する課題 | 労働基準法の順守が難しくなる |
人材雇用に関連するコストが増加する | |
時代や顧客ニーズに合った取り組みができない | |
働く社員に関連する3つの課題 | 個人への負担が大きくなる |
仕事へのやりがいを感じられなくなる | |
従業員のスキルや経験が育たない |
それぞれ、解説をします。
経営に関連する3つの課題
企業にとって必要な人材が足りていない場合、経営に悪影響を与えます。
どのようなトラブルが考えられるのか、3つの課題をみてみましょう。
1:労働基準法の順守が難しくなる
会社の人員が不足している場合、既存労働者一人あたりの作業負担が増加しがちです。
商品やサービスの提供を続けるために、残業や休日出勤をお願いした結果、労働基準法に違反してしまう恐れがあるため、注意しましょう。
具体的には、
- 労働時間が6~8時間以下の場合は最低45分、8時間を超える労働の場合は最低60分の休憩時間を設ける
- 残業や法定休日に出勤を依頼する場合は、36協定を結ぶ
- 残業時間の上限(月45時間、年360時間)をかならず守る
といった配慮が必要です。
違反してしまった場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる場合があります。
従業員一人が賄う仕事の量、サービスの範囲を制限するなどの方法で、労働基準法に則った働き方を大切にしましょう。
※【2023年最新版】残業時間の上限や法改正について詳しく解説
2:人材雇用に関連するコストが増加する
少子高齢化や業界ミスマッチにより、人材の獲得が難しくなっています。
そのため、これまではハローワークで採用できていた労働者を、有料の採用サイトや広告、エージェント、人材派遣などの方法で集める必要が生じ、採用コストが大きくなる場合があるでしょう。
人材獲得までの費用を少しでも抑えるなら、現在どのような外部コスト、内部コストにお金がかかっているのか洗い出し、削減できるコストをカットしたり、別の手段に切り替えたり、といった施策が必要です。
ライバルに勝つために、より高い給与で迎え入れるような場合、支払う賃金もアップします。
高い賃金を支払うに値する人材かどうか、より慎重に採用手法を選び、活躍が期待される人材を選定しましょう。
※採用コストとは?平均相場と採用単価の削減方法・無料サービスを紹介
3:時代や顧客ニーズに合った取り組みができない
人材が不足していると、時代や顧客が求めるニーズに応えられません。商品開発や新商品の提案、サービスの質向上などが遅れてしまった場合、ライバルと差がついてしまう恐れもあります。
新商品や新しいサービスの構想はあるものの、人材が足りずスタートできない、という声も多く聞かれます。
新しい企画やチャレンジをリーダーとして引っ張ってくれる人材がいない、経験豊富な人材を雇用できない、という悩みから、企業成長が妨げられてしまうでしょう。
働く社員に関連する3つの課題
人手不足は、自社で働く社員にもデメリットを与えます。
従業員にとっての3つの課題をチェックして、改善策を検討しておきましょう。
1:個人への負担が大きくなる
企業の人材が足りていないと、働く社員一人当たりの負担が大きくなります。残業や休日出勤が増えるだけでなく、これまでと同じ給与なのに仕事量だけが増える……という状態に陥りやすく、不満につながりがちです。
疲れによるメンタルの不調やストレス、多忙によるミスや災害、人間関係のトラブルなども考えられます。
目の前の仕事に追われてしまうと、キャリアプランが見えなくなり、この会社にずっといて良いのかな……という不安から、離職につながるケースも考えられるでしょう。
既存社員が減るのは絶対に避けるべき事由のため、いかに負担を減らせるか、楽しく働いてもらえるか、といった配慮が必要です。
2:仕事へのやりがいを感じられなくなる
人手が足りず、常に忙しい状態が続いてしまうと、社員のモチベーションが低下してしまいます。はじめのうちは、「自分が頑張らなくては!」と思っていた従業員も、次第に疲労が溜まり、同じことを繰り返す毎日にやる気を無くしてしまう場合があるでしょう。
上司や管理職、経営者には本音を言いづらい環境の場合、我慢する時間が長くなり、心身のトラブルが起きる可能性もあります。
人材不足の今だからこそ、既存社員の気持ちを第一に気遣う配慮が必要です。無理がかさなっていないか、困っていることはないか、ヒアリングなどを試みながら、手厚くフォローできる体制を整えておきましょう。
3:従業員のスキルや経験が育たない
現状やるべき仕事がある場合、新しい仕事を教えたり、従業員に資格を取得させたり、セミナーに参加してもらったり、といった時間が失われます。その結果、社員の育成が思うようにはかどらない、学習の機会がなく従業員の不満が高まる、といった事態を招く恐れがあります。
社員が自己啓発に励んだり、休日にリフレッシュしたり、といった時間は、人材育成に欠かせません。現在携わっている仕事以外の業務を覚える、新しいことにチャレンジする、自分の時間を持つ、そんな時間をしっかり確保して、従業員の向上心や意欲を伸ばせる環境を作りましょう。
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人手不足解消につながる施策4つ
今後ますます働き手が減ると言われている中、求職者を集めたり、人材の力がなくても業務が回るようにしたり、といった施策が欠かせません。
事業を安定させるために、どのような対策をしておくべきか、4つのアイデアを紹介いたします。
1:採用基準・福利厚生を見直す
求職者が思うように集まらない場合、給与や賞与などの賃金体制、休暇や保険、待遇などの福利厚生面に満足していないケースが考えられます。地域の同業他社は、どのような制度で人材を迎えているのか、チェックの上、自社の採用基準を見直してみましょう。
求人内容だけでなく、既存社員の勤務条件も見直しておくと、離職を未然に防げます。
必要に応じた社員アンケートなどを実施しながら、これから採用する人材も会社の中核人材も長く働ける企業へ、環境を変えて行きましょう。
※福利厚生の種類や目的・企業にとってのメリットなどを分かりやすく解説
2:高齢者や主婦が活躍できる企業にする
定年を迎えたあとの高齢者や子育て中の主婦の多くが、自分のペースで働ける職場を探しています。その一方で、高齢者や主婦層向けの求人が少なく、働くのを諦めているケースがみられます。
このような人材を獲得できると、これまでの経験を活かした働きぶりが期待できます。
少子高齢化やミスマッチによる人材不足を乗り切るためには、これまで採用していなかったポテンシャルやモチベーションの高い求職者の存在が欠かせません。
育児をしながらでも働ける環境を整えたり、高齢者が活躍できる舞台を用意したりして、幅広い層が生き生きと働ける企業を目指してみましょう。
※シニア・シルバー世代の雇用|メリット・リスクや採用成功のポイント
3:IT化やDX化で業務効率化を図る
人材不足は、これからも続いていくと予測されています。この時代を生き抜くためにIT、AI、システムや機器などにまかせられる部分は頼る、といった転換も必要です。
特に中小企業は、新しいシステムの導入が遅れがちです。しかし大手企業では次々に人に変わる施策が取り入れられ、作業の効率化や自動化が進んでいます。
配膳ロボットや掃除ロボットを導入する、手作業で入力しているデータや保存しているファイルをPC管理にする、会議や新商品のアイデア出しなどにChat GPTを活用する、など、さまざまな方法が待っています。
自社では負担が大きく、ITの力では難しい部分について、外注業者やフリーランスの活用を検討するのも良い方法です。現在の事業状況をたしかめて、どの作業に人員を割いているのか、人の手を使わなくても進める方法はないか、検討してみましょう。
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4:外国人雇用を積極的に進める
人材不足を補う方法として、外国人雇用を進める企業が増えています。日本で働きたい外国人の数が年々増えていることもあり、外国人労働者が人手不足解消に欠かせない存在になっています。
外国人採用をしたことがないから不安、という場合は、外国人紹介や雇用にあたってのサポートが受けられる求人サービスなどを利用する、という手段もあります。学習意欲が高い人材、高い外国語力を持つ人材も少なくありません。
外国人労働者が一緒に働ける土壌を整えておけば、今後さまざまな場面で役立つはずです。求人を出してもなかなか採用にいたらない場合は、外国人人材の雇用を視野に入れてみましょう。
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外国人人材はどう雇用する?
急ぎで人材が必要な場合、求人や待遇に関連するコストをすぐに上げられない場合は、外国人採用に踏み切ると、労働力を確保できます。
外国人雇用を検討するにあたり、外国人を採用する方法、どう人材を探せば良いのか、という点を確かめておきましょう。
外国人には雇用できる人・できない人がいる
日本には、多数の外国人が暮らしていますが、その人達すべてが国内で就労できるわけではありません。企業が人材として雇用できるのは、就労可能である「在留資格」を持つ外国人だけです。
また在留資格は全部で29種類あり、外国人が所持している在留資格によって、就労できる業界、業種が変わります。外国人を雇用する前に、自社で必要としている部門の在留資格が存在しているかどうか、確認してみましょう。
外国人を採用する場合は、必ず在留カードをチェックしてください。就労可能な人材かどうか、適した在留資格を所持しているか、カードの期限は切れていないか、という部分を一つひとつ確かめながら採用活動を進めましょう。
※外国人採用の在留資格とは? 申請の注意点や手続きの方法を解説
人手不足を救う「特定技能」の在留資格
少子高齢化やミスマッチによる人材不足を改善するために、「特定技能」という在留資格が創設されています。
特定技能は、採用難が続いている介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械製造・電気・電子情報関連産業、建設、造船・船用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の分野で就労できます。
特定技能外国人は、最低限の日本語能力をそなえている点、単純労働をお願いできる点もメリットです。
スムーズにコミュニケーションできる外国人人材が欲しい、単純作業に就いてもらえる人材を探している、と言う場合は、特定技能の雇用を検討してみてください。
外国人人材を採用する方法
外国人人材を雇用する場合、出入国管理庁への届出や母国とのやりとりといった手続きが必要です。これらの作業が自社では難しい、という場合は、外国人に特化した人材紹介サービスを活用してみましょう。
外国籍のコーディネーターが対応している業者、支援計画の作成や実施を代行して貰える業者などがありますので、必要に応じたサポートをお願いできます。
住まいや職場でトラブルが起きないように、マニュアルを用意したり、採用担当が説明したりできるとよりスムーズです。
人材紹介サービスを利用する場合、業者に支払う手数料が発生します。日本人雇用の採用コストと比較して、納得の上で進めていきましょう。
まとめ
人手不足の状態は、今度ますます深刻になっていきます。
人材に代わりITやAIの力を生かした経営をする、外国人人材を積極的に採用するなど、自社に合った施策で労働力を確保しましょう。
また売り手市場の業界が多いことから、既存人材がより良い条件の企業へ転職してしまう未来も考えられます。
採用して終わりではなく、社内で人材が活躍できる場所や機会を用意する、他社よりも良い待遇を提示する、などの配慮で、長く勤められる企業を目指しましょう。
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